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フィリピンの子どもたちとの出会い
平澤直人

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 2008年8月末、水牛家族の主催するスタディーツアーに参加しました。旅程はセブ島2泊、レイテ島6泊の8日間。ツアーで訪れた場所は、水牛家族が支援するフィリピンの農村を中心に、日本軍が関わった戦争の史跡、フィリピンの現代の問題である政治的暗殺の被害者の遺族、日本のODAによって住む場所を追われつつある貧しい漁村などなど…とても内容の濃いものでした。このように書くと勉強ばかりの窮屈なツアーのように聞こえるかもしれません。しかし実際は現地の人達とのふれあいが多く、一緒に食事をしたり、飲んだり、家に泊めてもらったりもしました。そのふれあいの中でも、特に印象の強かったフィリピンの子ども達について書こうと思います。
 まずはじめの子ども達はレイテ島のとある農村。この村の人達は元々レイテ島の港湾都市オルモックの河川敷に小屋を建てて暮らす、いわゆるスクワッター(squatter)でした。それが何年か前の洪水によって住む場所を失い、今の村に集団で移住してきたそうです。洪水によって家だけではなく家族を失った人もいるでしょうし、移転した村での不慣れな農業に対する苦労もあるでしょう。しかしそんな苦労が全く感じられないのは、明るいフィリピン人の国民性なのでしょうか、それとも訪問者に対するホスピタリティーの精神なのでしょうか、とにかく僕らは温かく迎えてもらいました。

 この村で僕が驚いたこと。それは子ども達の身体能力の高さです。日本からのお土産で、ダルマ落とし、剣玉、コマをもっていったのですが、それらをすぐに出来るようになってしまいました。特に驚いたのがコマです。僕が手本を見せて約20分後、4、5歳ぐらいの男の子が自分で紐を巻いてコマを回したのです。僕が紐の巻き方、コマの投げ方を手取り足取り教えたならそれもわかりますが、子ども達は僕が何回かやるのを見ていただけ。その後も同年代の男の子2、3人が次々にコマを回せるようになりました。子ども達がその時初めてコマ回しをしたのは言うまでもありません。その後庭に出て遊んだのですが、その時に子ども達が見せてくれた側転。これもすごかった。同じく4、5歳の男の子でしょうか、彼の側転は両足が一番上に来たところで身体をひねってばねの様に反り、着地は「タッ」と両足で着くのです。もう少し小さい子ども達もそれに習って何回もやってくれました。まだ年長の子のように上手には出来てなかったけれど、あと数ヶ月後には体操選手のような側転が出来るようになるのでしょう。
 次に出会った子ども達。彼ら(10人ぐらい)は全員孤児でした。彼らと出会ったのはレイテ島のまた別の農村。その村で僕たちスタディーツアーの参加者を囲んで昼食会が開かれたのですが、そこに現地の牧師さんが援助をしている孤児施設の子ども達も参加してくれたのです。年齢は小学校4年ぐらいから中学校1年ぐらいに見える彼らは、元々はストリートチルドレンだったそうです。
 フィリピンの都市ではストリートチルドレンをよく見かけます。貧困や性知識に関する問題からでしょうか、親が生まれて間もない子を捨てるケースがよくあるそうです。彼らに出会う前、僕が孤児やストリートチルドレンと聞いてイメージするのは、表情が暗く、内向的で、非社会的な子どもでした。しかし彼らは実に明るく、走り回って遊んだり、食事の用意(椰子の実を割ったり、魚を焚き火で焼いたり)を楽しそうに手伝ったり、その食事をモリモリ食べたり、と本当に屈託のない子ども達でした。僕の孤児に対するイメージはすっかり裏切られてしまいました。

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 最後はストリートチャイルドとの出会い。場所は大きく変わってセブ島の中心都市セブシティの大通り。時間は夜9時ぐらいだったでしょうか、ツアーのメンバー3人がコンビニで買ったアイスクリームを食べながら歩いていると、突然、4歳ぐらいの女の子が僕らの間に入ってきて、身振りで「アイス欲しい」と訴えるのです。彼女の身なりはみすぼらしく、一目でストリートチルドレンとわかりました。突然のことでびっくりした僕は、身構えてしまい、はじめは断ったのですが、女の子も慣れたものなのでしょう、簡単には引き下がりません。ついに僕はほとんど手をつけていない自分のアイスクリームをあげました。ガイドブックによっては、そのような物をあげる行為は観光客に群がる行為を助長し、他の観光客のためにもよくないので、子どもであっても毅然とした態度で断りましょう、と書かれている本もあります。でも僕はあげて良かったと思いました。そんな小さな女の子に毅然とした態度で断るのは、その後なんとなく嫌な気分が残るものです。女の子はアイスを貰ったからといって、お礼の言葉を言うでもなく、笑顔を見せるわけでもありません。普通、子どもはかなり小さい頃から「人に物を貰ったら『ありがとう』といいなさい」と親に教えられるでしょう。日本でもよく見る光景です。しかしストリートチルドレンにとっては、そのような社会的行為を教えてくれる親は居なくて、ただ生きるための行動力を身につけるのではないでしょうか。

 このように、フィリピンでの子ども達との出会いを書きとめてみました。一番初めの村での子どもの身体能力の高さ。次の村で出会った孤児たちの、現実の困難にもかかわらず明るく元気で人生に前向きな態度。ストリートチルドレンの食べていくためのたくましさ。月並みに言えば、それらは「生きる力」ということになるのだと思います。旅行はいつでも、他の文化とのふれ合いを通して自分のことを考える機会を与えてくれます。今回のスタディーツアーは、特に子どもとの出会いを通じて、大切なことを考える機会を与えてくれました。



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